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柿泥棒 

 家の斜面に柿の木が植わっている。私がここへ越してきた1995年に親父が植えてくれた。
桜、エゴノキ、金木犀も植えてくれた。しかし、親父はあくる年にあっけなく亡くなった。
小さかった苗が17年経ったいまではみんな大きく育った。
 桜は天狗巣病にかかったが、村人に教えてもらった手当てが効いて毎年花を楽しませてくれる。エゴノキは初夏にごくごく小さな白い花を咲かせる。土が合ったのか、金木犀は背も高く枝もいっぱいのばし、他所では見かけないほどのこんもり大きな姿になっている。少し前まで狂おしいほどの甘い香りで家をつつんでいた。
 柿の木は10年ほど前、台風の吹き返しの風で一番太い枝が幹から裂けおちた。大きくえぐられた幹のそこだけ白い木肌が痛々しい。もうだめかな、と思った。しかし、柿渋の強い防腐・防水・防虫効果は樹全体が持っているのではないだろうか、一縷の望みをたくした。柿は見事に生き延びて傷を修復し、数年後には初めての実をつけた。 
柿が好物の親父が生きていたら、どんなによろこんだだろう。しかし、私は柿にかぎらず果物にはほとんど手をのばさない。あまり好きではないので自分で皮をむくなんて、めんどくさいが先に立つ。だれかが食べやすく皿にもってくれたら一切れぐらいはいただくけれども。

 ときどき遊びに来る大阪のSさんは柿好きだ。はじめて食べたとき
 「ここの柿はうまい。アンタが食べへんならオレがもらいにくる」
 ちょうど新米のシーズンとかさなるので米の購入をかねて柿採りにやってくる。
 「ここは水も空気もきれいやから米がうまい。作り手が『完全無農薬ではない。一回だけ除草剤をつかっている』と言ってくれるのは安心や。街の市販米はどんなふうに作られているのか、まったく分からない。倉庫保管には米袋の上から農薬をかけている、とも聞く。おまけはこんなうまい柿」
 青かった柿がうすい橙に色づきはじめた。三週間後に来る予定を立てていた彼にあわてて写真をおくった。
 「やばいねこれは。この一週間が勝負かな。早く行ったほうがよさそうや・・・柿の様子また教えてください」
 Sさんは柿の勉強もしたようだ。今回は収穫だけでなく、下草刈り、枝の剪定、さらには肥料もあげる、と言う。えらい気合入ってるなぁ~。
 ここのところ忙しく、家を空ける日がおおかった。気にはなっていたが、あっという間に一週間がたった。熟しすぎたかな、心配しながら見にいくと柿がない。樹冠あたりに二個見えるだけだった。
やっぱり熟しすぎて落ちたのかな、地面を見ても一つもころがっていない。柿泥棒? まさか。
 ちょうど来ていたTさんに話すと
 「そら、柿泥棒や。鳥の仕業」
 「えーっ、あんな不安定な枝先で?」
 「果物が葉と同じ色から、赤や黄色に色づくのは鳥や動物に見つけてもらうため。食べられることで種を運んでもらう」
 「う~~ん」
 Sさんのがっかり顔がうかんだ。
「ごめん」

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